聞こえた気はしないのに確実にわかる

耳が聞こえなくなって、家族が出掛けていつ帰ってきたのか、特にベッド上で留守番したときは、ある時期まで全くわからなかった。それが「帰ってきたのかな?」と感じて玄関の方を見ると家族が立っていることが増え始めた。はじめはたまたま見たら帰っていただけだろうと思っていたが、玄関の方に目をやるとちょうど帰ってきたばかりの家族がいることがあまりにも多く続くと、何か聞こえているのかなと思いたくなる。しかしこれといったものを聞いてはいない。帰ってくるまでなかった人が出す音が、帰ってきたことで出される。そんな音のするしないの区別は出来始めているのだろうか。気配みたいなものを感じている感覚が強い。
以前は家族が帰ってきたことは、帰ったことを教えてもらうか、帰った家族が自分の視界に入ることなどでないと知り得ないものだった。