音を聞き分けることから

ある日の夜、大きな音がした。雑音である。「またか」と思ったが、いつもと違うのは、毛嫌いせず、脳が雑音を聞いていることだった。夜、私ひとりでうちに居て、テレビをつけていない。こういう状況は私の記憶にあり、これと、現に聞こえているものを脳が比べているようだった。

きこえているものは雑音に変わりはないが、聞きようによっては聞いたことのある音をふくんでいるようにに思えた。

最初は聞こえているものは、インターフォンの受話器から聞こえるものだった。夜は静かで、サーという音がきこえるみたい。次にしょっちゅううるさくきこえたのは、バイクと車の走る音。記憶では、信号が青になると、バイクはバリバリと音を出し、車よりうるさかった。これに近い音がきこえた。
でもきこえるものがいつもより大きく、これから会社から帰ってくる夫は聞き分けられるかと思った。着替えたりしていた音だったと思うが、木を割るような音で、帰ってきたことがわかった。特に大きな音ではなく、でも他の音とは一線を画するような音だった。

テレビがつけられると、夜の音は消えてしまい、昼も夜も感じられないような気がした。