聞こえず話せないが人に関心がある

今の透析室でお世話になりはじめた頃、患者会会報に投稿したことがある。
聞こえず話せないが、同じ透析患者のよしみで微笑んだら微笑み返してください、なんて書いた。
会報が配られ、しばらくアイコンタクトができるかなと辺りをキョロキョロしてみたが、実際目が合った方はふたり。最初に目が合ってその後あいさつのように微笑んでくださったのは、ベッドも近い患者会の副会長の男性の方だった。 でも現在別の透析施設へ移られしまい、とても残念だった。

現在、隣のベッドのおじい様は、磁気ボードで短い会話をしてくださっている。
こんな面倒なことをおじい様がしてくださるのは、目を合わせることのなかったおじい様がしてくれていたことに気付いたからだった。
「お先に!」、と透析を終え帰るおじい様の口の動きで言葉を読めたことだ。

今までずっと私には聞こえないのに、小さい声で言ってくれていたんだろうか。
神様が見ていようといまいと、人より先に帰るときには何か言わねばならないとお考えのお方だったのだろうか。

音声はなくても、おじい様の心意気?みたいなものを何となく感じたので、私は表情で答えくなったのである。