匂い

今まで過去を思い出した匂いを思い出したことがあります。
美術室を思い出したら絵の具の匂い、研究室を思い出したら滅菌処理器オートクレーブの匂い。

その逆が起こったんです。
家には自分ひとりなのに突然古い本の匂いがして、強い匂いじゃないからそのうち消えるだろうと思ったのに消えない。
今いる場所で感じる匂いとは思えなくて、気になる匂いを感じ続けていると、その匂いから連想される記憶が湧いてきた。
行ったことがある古本屋さん、あまり読まられなくなった古い書籍が収められた大学の図書館の地下にある書庫、いとこのお兄さんが私に似ていると言ったのを思い出して古本屋で見つけた絵画。
なんでこんな記憶が?
でもあることを思い出したら想起される匂いより、突然感じた匂いの方が溢れ出る自分の記憶のボリューム感があっておもしろいなあと思いました。

こんな感じで自分の身体が動いている記憶、思い出したらいいのに。
突然感じた匂いによる記憶は、おもしろいけど、リハビリにつながるものとはちょっと思えない気がするんです。
そう感じるのは、以前記憶からイメージをやってみたら、動きはないが臨場感を感じることは脳で作れるんだなと思った事があったからです。
記憶からイメージできそうな気がする・・・
その時はベッドで横になってブランコをイメージしたのですが、匂いの記憶より、ある一時の記憶じゃなく、何層にも重なった記憶を利用している感じがしました。
リハビリで、脳出血前の動いている自分を思い出すよういわれたことがあるので、あり得るリハビリ法だけど私はできたことがないんです。


岸田劉生|麗子像  座敷童みたいって思っちゃった